EXHIBITION:
本展「織りの地平 — 記憶と文化をたどる旅」は、タペストリー作家・小林グレイ愛子による、織りの表現をめぐる現在地を紹介する展覧会です。
1950年に東京で生まれ、女子美術大学油絵科を卒業後、スペインへの短期留学を経て、織物制作に取り組み始めました。現在はアメリカ・カリフォルニア州を拠点に、素材と向き合いながらタペストリーの可能性を探る創作活動を続けています。
1985年に初めて訪れたグアテマラでは、先住民の女性たちが代々受け継いできた手織物と出会い、その力強く豊かな布文化に深い感銘を受けました。鳥や動物、草花、幾何学模様など多彩な文様が、鮮やかな色彩とともに布にあらわれるその造形は、小林にとって「布に込められた思い」を見つめ直す契機となりました。以降、小林はグアテマラの織りの精神と手仕事の確かさに深く共鳴し、自らの歩みの中で独自の表現を築いてきました。
本展では、小林自身の手によって織られたタペストリー作品を展示します。糸の重なりから生まれるリズム、布面に現れる抽象的な構成、そして文化や記憶と静かに交差する気配。作家の視線と身体が織り込まれた作品のひとつひとつから、織りが導く風景を感じ取っていただければ幸いです。
異なる文化が複雑に絡み合い、価値観や文化の境界線が揺らぐ時代にあって、「織ること」は、他者との関係をつなぎ直す静かな行為として、あらためて意味を持ちはじめています。どうぞ、布に込められた時間と思想に耳を傾けながら、ゆっくりとご鑑賞ください。
小林グレイ愛子 Aiko Kobayashi Gray
1950年東京生まれ。女子美術大学洋画科卒業後、織物に転向。スペイン留学を経て、グアテマラを幾度となく訪れ、民族衣装の収集・研究に取り組む。1998年より米国カリフォルニア在住。
タペストリー作家として、日本、アメリカ、スペイン、グアテマラなどで多数の展覧会を開催。また、グアテマラ織物に関する執筆、スライドレクチャー、テキスタイルツアーの企画、ワークショップ指導など、織りと文化に関わる多彩な活動を行っている。
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